オークションサイトで定期巡回するカテゴリは「望遠鏡パーツ」「双眼鏡」。気になったものはもちろんウォッチリストに登録しますが、たまに終了当日になっても価格が上がっていないものがありますね。たいていは終了5分前から『お祭り』が始まり、延長に次ぐ延長でだいたい相場の価格で落札されます。皆さんマニアなので「これはこの値段なら手に入れておこう」と思うものにはしっかり反応されるものです。

前置きが長くなりました。
先日、双眼鏡のカテゴリで、ビクセンの旧タイプアスコット7×50ミリが開始価格1,000円のまま終了日を迎えているのを見つけました。現行の防水型になったアスコット7×50ミリは、実視界6.4°というかなり狭い視野になっています。かつて理科振興法では7×50ミリ双眼鏡の実視界は7.1°と決められており、実際1970年代頃売られていたものは、
ニコンやフジノンは7.3°でしたが、ビクセンやアストロ、ミザール、エイコーなどは大概7.1°でした。

旧型アスコットは実視界7.1°で、まさにこの慣れ親しんだ昔のスペックでした。同時期に販売していた上級機種アルティマ7×50ミリは6.4°でしたから、普及機の方が広視界だったわけです。

1,000円のアスコットに一応3,000円の上限で入札し、放っておいたら2,600円で落札出来ました。送料含めても3,200円ほど、まあこれでカビが無ければ拾い物という感じでした。

届いた品は、キャップ類が無しでケースのみ付属でした。まあ仕方ない。レンズを注意深く見てみると、片側の対物レンズの内側に薄いカビの発生が始まっていました。鏡胴を外し、内側をアルコールで拭いたところ、殆ど跡もなく綺麗になりました。

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実際に覗いてみると、コントラストが少々低い感じなのと、比較的強めの糸巻型歪曲があります。しかし中央部の像質には大きな問題もなく、2,600円なら良い買い物だったと納得できました。

細部を見てみると、対物レンズはマルチコートで接眼レンズは空気接触面のみマルチコートのようです。プリズムは反射光からしてモノコートのようでした。

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レンズのコバは黒塗りされておらず、白く見えます。この辺りがコントラストに影響しているのかも知れません。

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因みにこちらはアルティマ10×42ミリの対物レンズです。コバ塗りされていることがわかります。しかしアスコットのように鏡胴にネジ切り加工が施されておらず、迷光対策としてはアスコットの方が良いという皮肉な状況が判明しました。

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アルティマは上級機種だけあって、プリズムもマルチコートされています(紫色に大きく見える蛍光灯の反射光がプリズム面です)。

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アスコットはニコン7×50CFと比べると、明らかに色収差が大きいことがわかります。アクロマートレンズの設計には大きな差がないはずですから、ニコンの場合はプリズムや接眼レンズの設計で色収差補正をしているものと考えられます。

しばらく前に数本の双眼鏡を手放したのですが、この2か月ほどで以前より数が増えてしまいました。この勢いで、ツァイス・イエナのBINOCTEM7×50を落札しようと思いましたが、15,000円上限ではさすがに無理でした。もっともツァイスの双眼鏡は歴史が長く、非常に種類豊富なので、もう少し勉強してからの方が良さそうです。