1977年5月、高校入試合格祝いとして、かねてから両親にお願いしていた望遠鏡を買いに親父と上京しました。向かった先は板橋本町の高橋製作所本社。当時高橋製作所の望遠鏡は直販のみで、購入するには現金書留か郵便振替で送金するか、直接買いに行くしか方法がありませんでした。

購入直前まで機種選定に悩み、100mm反射赤道儀Ⅰ型にするか、80mm屈折赤道儀にするか決めかねていました。親父が「どうせ買うなら、多少高くても良いものを買った方が長く使えるだろう」と言ってくれて、よしじゃあ80mm屈折にしようと決心したものの、今度は三脚にするかピラー脚にするかで迷います。「メーカーの人に相談して決めたらどうだ」と言われ、当日ショールームで話を聞いてどちらかにしようと言うことにしました。

タカハシ本社に到着してまずビックリ。あまり大きいとは言えない古い建物で、1階が工場、2階に事務所がありました。木の階段を上がったところに望遠鏡が何台か展示されており、お目当ての80mm屈折赤道儀も木製三脚仕様の物が展示されていました。

対応してくださったのは、後から考えるとのちに天文ショップアトムの社長になられた平井さんだったような気がします。

私が80mm屈折赤道儀を買いたいと申し出ながら、実は三脚にするかピラーにするか悩んでいると相談すると、もしその都度家の中から一式を運び出して組み上げるなら三脚の方が良いが、屋外にピラーを置く場所があるなら安定感のあるピラー脚の方がお勧めだとのこと。自宅は田舎ですし、家のすぐ脇にピラーを置く場所はいくらでもありました。「それならピラー脚の方が使い勝手がいいですよ」と言われ、そこでピラー脚仕様を注文して帰って来ました。

およそ1か月ほど経って、発送完了の電話を受けました。数日後の土曜日午後、運送会社のトラック(当時は宅配便などなかったので、貨物便でした)が2個口の大きな木枠に入った望遠鏡を運んできてくれました。1本ずつ釘を抜いて木枠をばらす時のもどかしさは、未だに忘れられません。

ピラー脚の支柱は思ったほどの重量もなく、脚部の鋳物がかなり重かったことは意外でした。実際に使ってみると、確かに天頂付近を観たりするときに邪魔になるものが無いので勝手は良いのですが、さすがにその都度設置場所までピラーを運ぶのは大変でした。結局ピラーは屋外に置きっぱなしにして、赤道儀と鏡筒を部屋から運び出して使うことにしました。

数年前から、いわゆる“古スコ”趣味が高じて来たとき、やはり三脚付きの姿に郷愁を感じるようになりました。しばらく前に65mm D型用の木製伸縮脚を入手していたのですが、やはり当時のカタログに載っていたスラッとした直脚の方が似合うだろうと思っていました。

先日オークションにその直脚が出ているのを見つけ、ちょっといい値段でしたが即決価格で落札しました。そして今日、ようやく組み上げることが出来ました。

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やはりバランスが良いですね。140mmの長さがある直脚は軽いですがかなりの太さ厚さがあり、頑丈そのものです。65D用の脚は伸縮脚としては最強だと思いますが、金具が多く重いのが難点でした。こちらはガッチリしていてその上軽量です.。

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しかし、だからと言ってこれをどれほど使うのか?まあ所有することの満足感だけのような気もしますが、購入後44年目にして木脚仕様に変更が完了したのでした。