しばらく前に、以前会社の部下だった女の子と飲み会で一緒になりました。その時彼女から、「実は亡くなった叔父さんが持っていたカメラを、形見分けでお父さんがもらったんですけど、使わないからって私のところに来たんです」と聞きました。彼女はひとり娘なので、男の兄弟でもいれば、そちらに回ったであろう中古カメラが彼女の手元に来たというわけです。
「ふーん、フィルムを使うカメラだろ?」
「そうです、そうです。デジカメの時代ですから、これから使う機会は無いとは思うんですけど、けっこういい品らしいので、メンテナンスに出した方がいいかどうか、Tさん(私のこと)見て頂けませんか?」
「見るくらいならいいよ。何てカメラか知ってる?」
「えーっとね、そう、ライカ」
「えーっ?!ラ、ライカ??」
「叔父さん、けっこうなカメラマニアだったみたいで、かなりの数を持ってたみたいなんです。でもお父さんよりも年上の兄弟でいろいろ分けちゃって、残ったカメラをもらったって言ってましたよ」
その日はそんな話をして別れ、先日再び同じ飲み会で彼女と同席になりました。見れば重そうにカメラバッグを担いでいます。
「持ってきたのか?」
「持ってきましたよ。とりあえずお願いします」
受け取って、恐る恐る開けてみると…、
出て来たのは、ライカR3でした。
実は私、コレクションと聞いて、てっきりM型ライカ、ひょっとしたらバルナックだろうと思っていたのですが、見事に肩透かし。しかし良く考えてみると、ライカの一眼レフなんて今まで触った事がない事に気が付きました。
手にした瞬間、その重さにびっくり仰天!えー?こんなに重たかったの?と驚きました。何というか、精密感が凝縮された重さと言うか、中身が詰まった重みと言うか、そんな感じです。
レンズはズミルックスR50ミリF1.4とエルマリートR35ミリF2.8の2本と、M型ライカ用の90ミリ2本(ミノルタ製とカナダライカ製)が入っていました。
ズミルックスは、惜しい事に中玉がクモの巣状のカビ有りでした。若干のコーティングヤケもあるようです。エルマリートの方はどうやら無事、両方ともフィルター回転装置の付いた純正フードが接続されています。
本体を見るとキズひとつない美品、しかし吊り金具がありません。また三脚穴周りにはキズひとつありませんから、持ち主は「使う」と言うより「コレクションとして持っている」タイプのライカオーナーだったようです。
モルトは溶けてベタベタ状態です。裏ブタのヒンジにも殆どスレがないので、もしかするとフィルムをあまり通した事が無いのかも知れません。
電池(SR44×2個)は液漏れを起こしてして、接点がイカれていました。とりあえずそこを磨き、手持ちの電池を入れました。使わないなら電池を入れる事もなかっただろうにと残念に思いました。スイッチをONにし、巻き上げレバーを回してシャッターを半押し…、動かない…。露出計は逝ってしまっているようです。シャッターを切ると…??切れない!ファインダーが半分暗くなった状態でウンともスンとも言わなくなってしまいました。
レンズをマウントから外してみると、ミラーが途中で止まっています。手でミラーを上まで上げてやると、ようやく縦走りのメタルフォーカルプレーンシャッターが下りました。どうやらクイックリターンミラー周りのグリスが固まってしまっているようです。10年以上全くシャッターをチャージする事も切る事もなかったためでしょう。
もったいないですが、これを修理に出すのはちょっとどうかな?と思います。電気入りではないライカ、M型やバルナック・タイプなら別ですが。彼女にもそう伝えました。
すると、
「レンズが別のカメラ用って事は、その本体もあるかも。今度実家に戻ったら探して来ますんで、またその時はよろしくお願いします!」と。
M2やM3なら、ぜひ実際に使ってみたいものです。しかし、だいたいは本体のシボ皮がボロボロに劣化して、レンジファインダーが曇ってしまっているんだろうなと思います。
日本の気候は、カメラには厳しいものがありますからね…。