70年代からの天文アマチュアが憧れた望遠鏡メーカーといえば、小型なら高橋製作所、中型反射望遠鏡なら旭精工研究所(アスコ)あたりでした。
 
アストロ光学や五藤光学は総合望遠鏡メーカーで、屈折式と反射式の望遠鏡両方を小型の物から天文台用の大型機材までを製造していて、カタログにはたくさんの種類の望遠鏡が掲載されていました。同じ大型望遠鏡を受注生産していた日本光学(ニコン)は、アマチュア向けのカタログは単品仕様で、当時は8センチ屈折赤道儀だけしか出ていませんでしたね。
 
憧れの別格として、三鷹光器がありました。60年代後半から、藤井旭氏や大野裕明氏、岡田好之氏らが活躍されていた福島県の白河天体観測所。天文アマチュアが作る共同観測所の走りのような存在でした。その白河天体観測所の機材の多くが三鷹光器製でした。ドーム内の30センチカセ・ニュートン反射、屋上に設置された20センチF5.5ニュートン反射を載せたフォーク式赤道儀などです。特に20センチはチロチロスⅡ世号と名付けられ、当時中学生だった私の憧れの望遠鏡でした。ドイツ式赤道儀のチロⅠ世号を改良したもので、赤道儀といえばドイツ式一辺倒だった当時、その洗練されたスタイルを雑誌の写真で見ては、「社会人になったら、屋根の上にドームを作って大きな反射望遠鏡を設置するぞ!」なんて夢見ていたものです。
 
しばらく前に、富士見町で太陽光を集光して蓄熱発電を行う実証実験施設が完成し、それを見学に行って来たという記事を書きました。今や三鷹光器は、エネルギープラント、医療機器、宇宙開発機器の製造メーカーとして世界的に有名になっています。
 
その見学会の式典で、三鷹光器の会社案内を頂きました。
 
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2には、全木製(光学系はもちろん違いますが)の15センチマクストフ・カセグレン望遠鏡の写真が掲載されています。これは以前、天文ガイド誌で藤井旭氏が記事に書かれていましたね。
 
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赤道儀架台は、あのGN-170です。実際のGN-170赤道儀は、量産メーカーの赤道儀とは全くレベルの違う架台でした。初めて実物を見た時、その仕上の美しさ・精密さにノックアウトされてしまいました。心の底から「欲しい!」と思いましたが、先立つものがなくて断念(笑)。そのうちに製造を休止してしまいました。
 
製品リストには、見開きで天体望遠鏡も載っています。ハイ・アマチュア向けと思われる機種も揃っていますが、同クラスの他メーカーに比べるとかなり価格が高そうです。
 
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五藤光学がアマチュア向け望遠鏡製造にカムバックするというニュースがありました。ニコンやペンタックスが撤退し、今や日本国内で天体望遠鏡を量産するのはタカハシとビクセンのみという状況でしたが、五藤の再参入というのは嬉しい限りです。こうなると三鷹光器にも、以前のMK-100やGN-170クラスの高精度赤道儀の製造をしてもらえたらなあ、なんて期待してしまいます。
 
しかし、現実的には非常に難しい事でしょうね。なぜなら国内の望遠鏡市場というのは、想像以上に狭くて小さな市場なのですから・・・。