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のらくろ漫画大全 作・画:田河水泡 1988年講談社刊
 
“のらくろ”は、昭和6年(1931年)から16年にかけて、雑誌少年倶楽部に連載された人気漫画です。作者の田河水泡先生は、戦後もこの“のらくろ”を書き続けたことからもわかる通り、戦前の子供たちにとても愛されたキャラクターでした。
 
この『のらくろ漫画大全』は、田河氏が戦前に発表した全ての連載漫画と挿絵入り物語を1ページに4ページ分ずつ収録した、今では貴重なものです。
 
捨て犬だった“のらくろ”が猛犬連隊に入隊し、二等卒(後の二等兵)から昇任していき、山猿やカエルなどの軍隊との戦いで大いに活躍し、最後は大尉にまでなります。生まれは貧しくとも、軍隊に入って頑張れば、皆に愛されつつ立派になっていけるという物語を、当時の軍国少年・少女達はたぶんとても好きだったのでしょうね。
 
1970年、私が小学生の頃、突如テレビアニメでこの“のらくろ”が放送されました。設定など原作通りですが、軍隊内での昇進などは世相を反映して意図的に外され、最後まで二等兵のまま。デカ二等兵やハンブル二等兵が友人で、ブル連隊長、モール中隊長などお馴染みのキャラクターの他に、連隊付け看護婦として“ミコちゃん”という女性犬キャラクターが出ていました。
 
さて原作本では、武勲を上げて兵卒から下士官、曹長から異例の昇進で少尉に任官、士官学校を出て部隊長・守備隊長として活躍します。大尉に任官後、思うところがあって除隊、大陸に渡る決意をします。
 
大陸は資源の宝庫、そこで天然資源を掘り当てて、国のために奉公したいというのが、その理由でした。大陸では半島出身の金剛君という友人を得て、鉱物資源の開拓を行うのです。昭和16年9月、太平洋戦争開戦直前、のらくろの物語はひとまず終了となりました。
 
さて、あとがきに作者が書いている事ですが、戦後のらくろはどうなったのか・・・?ノラ犬ゆえに行き場所がなくしばらく職を点々としたものの、デカやハンブルなど戦友たちの力添えを受けつつ、その後めでたくお嫁さんをもらい、二人で喫茶店を開店します。そして喫茶店のマスターとして幸せに過ごしたのだそうです。
 
戦前・戦中は、軍人となって武勲を上げて昇任する事がいちばん重要な事でしたが、戦後は新しい価値観の中で、慎ましく真面目に幸せな家庭を築くという大団円ですね。