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『ショート・ピース』大友克洋初期短編集 大友克洋作

『アキラ』などのSFや、最近では映画監督としても活躍する大友克洋氏の短編マンガを集めたコミックスです。
70年代に奇想天外社(解散)で刊行されていたものを、86年に双葉社が大判で再刊したものです。

収録されている中では、『宇宙パトロールシゲマ』が好きです。
いかにも70年代の大学生(ちょいと不潔で長髪)っぽい友人4人が、正月早々、仲間のボロアパートに集まります。酒を飲んで出る話は、もちろん彼女のことなど他愛のないもの。

そのうちに酒も残り少なくなり、何か面白いことをしようということになります。一人が「今まで誰にも話したことが無い秘密を話そう」と提案したことから、事態はとんでもない方向に・・・。
「実は俺、金星人だったんだ」冗談だと信用しない三人に、サイコキネシスを見せて驚かせます。次の一人は「水星人なんだ」・・・冷酒をいきなり沸騰させてしまいます。そして次は「悪いな、火星人なんだ、俺・・・」と人間の顔のマスクを外して、素顔を見せます。

残った一人、イジられ役の茂正君は、

実は、凶悪宇宙人たちを逮捕するために地球に派遣された『宇宙パトロールシゲマ』だったのです。

しかし、シゲマを信じない三人を納得させるため、海に隠してあるUFOを見せに、徹夜明けで海岸に向かうのです。向かう電車の中で、ショボい特撮映画のヒーローのような扮装をしていて、周りの人から笑われます。宇宙人三人も恥ずかしがるのですが、本人だけは気にしません。

着いた海岸で「わーッ!え・ん・ばーん!」と叫ぶシゲマ。そして海底からUFOが現れる・・・。宇宙人三人は真顔でその光景を見ていた後、誰からともなく大笑いを始めます。シゲマも笑い出し、「いやー、面白い新年会だったな」「なに言ってんだよ。お前が一番面白かったよ」と四人で笑いながら帰っていくのでした。
それを電車で一緒になって、4人のあとを付いて来た小学生が目撃する・・・。
という、実にシュールなマンガでした。

同じ四人が、アパートで麻雀をして大騒ぎするという、『ラウンド・アバウト・ミッドナイト』という短編もあります。

タイトルの『ショート・ピース』には、もちろん短編の意味もありますが、「短く楽しかった日々」の意味があるのだそうです。

高校時代や学生時代を舞台にした短編が多いことからも、なんとなくその意味がわかります。